○ 裁判で認められる賠償額は事案によって異なります。
事件 | 賠償額・和解額 |
電通過労自殺事件(最高裁) | 1億6,800万円 |
システムコンサルタント事件(最高裁) | 3,200万円 |
南大阪マイホーム・サービス事件(大阪地裁) | 3,960万円 |
みくまの農協事件(和歌山地裁) | 859万円 |
富士保安警備事件(東京地裁) | 6,294万円 |
はい。
○ 過労死の原因が仕事であると認められれば、労災保険の適用が認められます。また、過労死が使用者(会社)側の責任であれば損害賠償が認められます。
○ 労災保険を受け取ったからと言って、会社に対して一切の損害賠償請求ができない分けではありません。
○ 労災保険は、過労死で亡くなった方の全損害を補償する分けではありません。補償されるのは一部に過ぎないため、補償されない部分を会社(使用者)に対して損害賠償請求することが可能です。
○ 具体的には、労働者やその遺族は、会社(使用者)に対して安全配慮義務に違反したと主張することで、全ての損害について損害賠償請求が可能です。
○ 安全配慮義務は、自衛隊事件の最高裁判例依頼以来確立した義務です。「安全配慮義務」とは、少し難しく言いますと、「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務使用者が労働者に対して負う義務」のことをいいます(S50.2.25最高裁判決)。
具体的には、雇用契約に付随する義務の一つで、「使用者は労働者の生命および健康などを危険から保護するよう配慮しなければならない」というものです。
○ 安全配慮義務を負う者は、原則的には雇用契約上の使用者ですが、判例は、「使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の右注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである。」(電通事件)としており、使用者だけでなく上司にも安全配慮義務があります。
また、出向先も指揮監督権限がある以上、使用者に含まれ安全配慮義務を負っています。
○ 職場環境調整義務とは、判例上、「使用者は労働者との関係において社会通念上伴う義務として、労働者が労務に服する過程で生命及び健康を害しないよう職場環境等につき配慮すべき注意義務を負うほか、労務遂行に関連して労働者の人格的尊厳を侵しその労務提供に重大な支障を来たす事由が発生することを防ぎ、またはこれに適切に対処して、職場が労働者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務もある」とされるものです(福岡セクハラ事件:福岡地裁平成4年4月16日)。
○ 簡単に言いますと、会社には、安全・衛生面等、物的な面での環境を保全する義務の他、職場の上司、部下の指揮命令関係、または共同生活関係といった人的な面での良好な環境を保全する義務も含まれるということです。
原則
○ そもそも、自殺は本人の自由意思に基づくものであり、労災保険法では「労働者の故意による死亡」に当たるとして労災給付を受けることができません。しかし、特定の状態下での自殺は、「労働者の故意による死亡」には該当しないとして、業務起因性が認められ労災給付を受けることができます。
(1) 対象疾病に該当する精神障害を発病していること。
(2) 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること。
(3) 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により当該精神障害を発病したとは認められないこと。
○ また、会社に対する損害賠償請求でも、同様に判断されます。
○ なお、労働省の見解としては、「うつ病や重度ストレス反応等の精神障害では、病態として自殺念慮が出現する蓋然性が高いとされていることから、業務による心理的負荷によってこれらの精神障害が発病したと認められる者が自殺を図った場合には、精神障害によって正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、又は自殺を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺したものと推定し、業務起因性を認めることとする。」とされております。
○ 自殺が労働者個人の問題なのか業務に起因するのかの判断は事案によって異なりますので、弁護士に相談することをお薦めします。
いいえ。
○ 上記したように請求自体は、労災保険給付と使用者(会社)や第三者に対する損害賠償が可能です。
○ もっとも、これでは損害の二重取りになるため、労災補償・労災保険給付と損害賠償との間で一定の調整が定められております。
○ 労働基準法84条1項では、「この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。」と定めております。つまり、労災保険給付がなされた場合には、使用者(会社)は労働基準法上の災害補償責任を免れます。
○ また、同法2項では、「使用者は、この法律による補償を行った場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。」と定めております。つまり、労災給付を受けた限度で民法上の損害賠償責任も免れます。
○ 労災補償制度には次の7種類の補償があります
(1)療養補償
労働者が業務上負傷し、または疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、または必要な療養の費用を負担しなければならない(労働基準法75条1項)。
(2)休業補償
労働者が、療養のため、労働することができず、賃金を受けられない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の100分の60の休業補償を行わなければならない(労働基準法76条1項)。
(3)打切補償
労働基準法75条の規定によって補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷または疾病が治らない場合においては、使用者は、平均賃金の120日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい(労働基準法81条)。
(4)障害補償
労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり、治った場合において、その身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、補償を行わなければならない(労働基準法77条)。
(5)遺族補償
労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金の1000日分の遺族補償を行わなければならない(労働基準法79条)。
(6)分割補償
使用者は、支払い能力のあることを証明し、補償を受けるべき者の同意を得た場合においては、6年にわたり毎年補償することができる(労働基準法82条)。
(7)葬祭料
労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は葬祭を行う者に対して、平均賃金の60日分の葬祭料を支払わなければならない(労働基準法80条)。
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