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弁護士によるマタハラ110番
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弁護士によるマタハラ110番

マタハラのプロが答えるQ&A~目次

第1 マタハラとは

第2 マタハラの具体的な事例


第1 マタハラとは

 マタニティーハラスメント(マタハラ)とは?

○ マタニティーハラスメント(マタハラ)とは、妊娠・出産した働く女性に対して、妊娠・出産を理由に、職場において精神的ハラスメントや肉体的ハラスメントといった嫌がらせを行う行為を言います。

○ 通称マタハラと呼ばれております。

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 マタハラ(マタニティーハラスメント)は、法律に触れないの?

いいえ、法律に抵触します。

○ 男女雇用機会均等法・育児介護休業法・労働基準法に違反する場合があります。

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 妊娠・出産を理由に解雇された。弁護士さん、法律に触れるのでは?

はい、法律に抵触します。

○ 産前産後の女性が第65条の既定により休業する期間及びその後30日間も解雇することができません(労働基準法第65条)。

○ 男女雇用機会均等法9条においては、婚姻や妊娠、出産を理由とする解雇などを禁止しております。

○ また、妊娠中・産後1年以内の解雇は、事業主が、妊娠等が理由ではないことを証明しない限り原則無効となります(労働基準法第 19条、男女雇用機会均等法第 9条第 4項)。

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 出産で仕事を休んでいる。弁護士さん、出産を理由に解雇できるの?

いいえ。

○ 出産を理由にした解雇は認められません。

○ 上記したように男女雇用機会均等法第 9条3項に違反する法律違反です。

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 妊娠したため長期の休みを取ろうとしたところ会社から退職を迫られた。弁護士さん、これで解雇できるの?

いいえ。

○  産前産後の休業の申し出や取得したことを理由に解雇することはできません(労働基準法第19条、男女雇用機会均等法第9条)。

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 育児休業を取得したら退職を迫られた。弁護士さん、これで解雇できるの?

いいえ。

○ 労働者が育児休業及び介護休業の申し出をしたこと、又は育児休業及び介護休業をしたことを理由として解雇することも禁止されています(育児・介護休業法第10条及び第16条)。

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 男女雇用機会均等法においてどんなことがマタハラ(マタニティーハラスメント)として、法律違反としているの?

○ 男女雇用機会均等法9条3項では、妊娠・出産等を理由として女性に不利益な取扱いをすることを禁じています。具体的には、事業主に対し以下の行為を禁じています。

  1. 女性労働者が婚姻、妊娠、出産した場合には退職する旨をあらかじめ定めること。
  2. 婚姻を理由に女性労働者を解雇すること。
  3. 厚生労働省令で定められている事由を理由に、女性労働者に対し不利益な取扱いをすること。

~条文~

第9条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。

2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。

3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和22年法律第49号)第65条第1項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

4 妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。


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 厚生労働省令で定められている女性労働者に対し不利益な取扱いを禁止しているのはどんなこと?

○ 厚生労働省令で不利益な取扱いを禁止している事由は、以下の通りです。

  1. 妊娠したこと。
  2. 出産したこと。
  3. 母性健康管理措置を求め、または受けたこと。
  4. 坑内業務・危険有害業務に就けないこと、これらの業務に就かないことの申出をしたこと、またはこれらの業務に就かなかったこと。
  5. 産前休業を請求したことまたは産前休業したこと、産後に就業できないこと、または産後休業したこと。
  6. 軽易業務への転換を請求し、または転換したこと。
  7. 時間外等に就業しないことを請求し、または時間外等に就業しなかったこと。
  8. 育児時間の請求をし、または取得したこと。
  9. 妊娠または出産に起因する症状により労働できないこと、労働できなかったこと、または能率が低下したこと。
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 具体的には、どのようなケースがマタハラ(マタニティーハラスメント)になるの?

○ 妊娠・出産を告げたところ、退職を強要されるケースが典型例です。

○ 契約の更新をせずに打ち切られたりといった雇い止めのケースもあります。

○ 職場での降格や減給など一方的に処分が下されるケースもあります。

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 マタニティーハラスメント(マタハラ)被害にあった。弁護士さん、労働者が会社に対して争うには、どのような手段があるの?

○ マタニティーハラスメント(マタハラ)があった場合、労働者が会社に対して訴訟を提起するには、次のような争い方があります。

(1)解雇・雇い止めを受けた方→妊娠・出産を理由に解雇等をされた場合には、不当解雇として、会社に対し、会社に対し、労働者たる地位確認請求訴訟を提起する。また、未払い賃金の請求をする。

(2)マタハラで精神的に傷付いた方→マタハラ行為を受けた被害者が、会社に対し、職場環境配慮義務違反に基づき損害賠償請求訴訟を提起する。

○ ただし、法的な損害賠償請求権が成立したり、地位確認請求が認められるためには、行為の内容や、会社の職場環境への配慮に関する事情、およびどのような損害が発生したのか、などを証明していけるような証拠の準備が必要となりますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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 マタニティーハラスメント(マタハラ)被害にあった。弁護士さん、加害者に対して、どのような争い方があるの?

○ マタニティーハラスメント(マタハラ)があった場合、労働者がマタハラをした加害者に対して訴訟を提起するには、次のような争い方があります。

○ マタハラで精神的に傷付いた方→マタハラ行為を受けた被害者が、加害者に対し、慰謝料請求訴訟を提起する。

○ 会社に対する訴えとは別に、訴訟提起が必要です。

○ マタニティーハラスメントの被害者が加害者に対して交渉したり訴えたりすることは難しいので、マタハラ問題に詳しい弁護士にご相談下さい。

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第2 マタハラの具体的な事例

弁護士さん、マタニティーハラスメント(マタハラ)が違法であると判断された事例として、どのようなものがあるの?

○ 最近、「マタハラ訴訟」といわれ、大きな注目を集めていた判例があります。この訴訟は、副主任の職位にあった理学療法士である女性が、労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換に際して副主任を免ぜられ、育児休業の終了後も副主任に任ぜられなかったことから、病院に対し、上記の副主任を免じた(つまり、降格した)措置は男女雇用機会均等法9条3項に違反する無効なものであるなどと主張して、管理職(副主任)手当の支払及び債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求めたものです。

○ かかる訴訟において、最高裁判所は、労働者の明確な同意や特段の事情がない限り、妊娠を理由とした降格は、原則、違法になると判断しました。

○ 具体的には、妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる措置が原則として男女雇用機会均等法9条3項の禁止する不利益な取扱いに当たるとし、その上で、不利益な取扱に当たらない例として、 ①労働者が自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき ②事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき と判示しました。

判決文の抜粋:

「女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解されるが、当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度、上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは、同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である。

そして、上記の承諾に係る合合理的な理由に関しては、上記の有利又は不利な影響 の内容や程度の評価に当たって、上記措置の前後における職務内容の実質、業務上の負担の内容や程度、労働条件の内容等を勘案し、当該労働者が上記措置による影響につき事業主から適切な説明を受けて十分に理解した上でその諾否を決定し得たか否かという観点から、その存否を判断すべきものと解される。また、上記特段の事情に関しては、上記の業務上の必要性の有無及びその内容や程度の評価に当たって、当該労働者の転換後の業務の性質や内容、転換後の職場の組織や業務態勢及び人員配置の状況、当該労働者の知識や経験等を勘案するとともに、上記の有利又は不利な影響の内容や程度の評価に当たって、上記措置に係る経緯や当該労働者の意向等をも勘案して、その存否を判断すべきものと解される。」

○ なお、上記判決文は、下記の最高裁判所HPにございます。
//www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/ 577/084577_hanrei.pdf

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